農家や企業が温室効果ガスを減らしたからといって、その瞬間に取引可能なカーボンクレジットが生まれるわけではない。実際の削減活動と市場で識別される取引単位の間には、事業設計、資料収集、審査、発行の手続がある。このつながりを理解してこそ、削減事業のスケジュールと費用を現実的に見積もることができる。

本稿は、削減プロジェクトがクレジットにつながる一般的な判断の流れを説明する。具体的な手続の例には、自主的プログラムであるVerraのVCSを用いる。これは韓国排出量取引制度の外部事業や他国の制度にも同じ順序をそのまま適用できるという意味ではない。参加する市場と方法論を先に定めて初めて、正確な準備項目が明らかになる。

まず取引単位を区別する

EU排出量取引制度(EU ETS)は、排出総量を定めたうえで、その範囲内の排出枠を取引する仕組みである。対象企業は自らの排出量に見合う排出枠を提出する。これは削減プロジェクトの成果を審査して発行するクレジットとは、作られる経路が異なる。欧州委員会によるEU ETSの説明

したがって、「炭素排出権市場」という広い表現だけを見て事業計画を立てると、混同しやすい。作ろうとしているのが特定プログラムの削減クレジットなのか、すでに取引されている排出枠を管理しようとしているのかを、まず区別する必要がある。削減報告書を完成させた後に、別の市場の商品の価格を掛けて予想収益を示す計算は成り立たない場合がある。

顧客との最初の協議では、目標プログラムの名称、対象活動、用いる方法論を文書に記すのがよい。まだ選べていなければ、市場参加の可能性を検討している段階と表示する。事業の現在地を正確に表現してこそ、その後の作業も無理なく定められる。

方法論と事業境界を定める

VCSの公開案内は、適用可能な方法論を選び、プロジェクト記述書を作成する段階を出発点としている。その後、公開意見募集と承認済み機関による妥当性確認を経て、登録を申請する流れを説明している。Verra VCSプロジェクト開発手続

方法論を見つけたことと、それを当該事業に適用できることは区別しなければならない。活動の種類が似ていても、地域、設備、運転条件、必要な資料が合わない場合がある。方法論の適用可能性の確認は、名称が似た文書を探す作業より広い範囲を持つ。

仮想の畜産削減事業であれば、参加農家、家畜群、飼料の使用期間、扱う排出源をまず整理できる。この一覧は特定方法論の正式申請書ではなく、事前検討の出発点である。事業開始後に必須記録が欠けていたと分かれば、すでに過ぎた期間の資料を復元するのは難しいことがあるため、準備の順序が重要になる。

削減活動を運用し、証拠を残す

設計した事業を現場で実行する際には、担当者と記録方法を定めておく必要がある。誰がどの活動を行い、記録をどこに集め、漏れをいつ確認するかまでを業務にしなければならない。設備の設置完了と観測体制の運用完了は異なる。設置後に資料が途切れた場合は、その空白をどう説明するかも残しておく必要がある。

報告書に載せる結果を作る過程も保存する必要がある。原資料を整理した人がどの項目を除外したか、計算式のどの版を適用したか、修正の前後で何が変わったかを確認できなければならない。最終ファイルだけを残すと、審査者から追加の質問を受けた際に、根拠を組み直す費用が大きくなる。

事業者は、報告書の文章と証拠が同じ範囲を指しているかも確認すべきである。一つの現場で観測した結果をすべての農家に適用できるかのように記したり、短い観測期間を長期の成果へ拡大したりすると、説明にずれが生じる。検証の準備は、記録を多く積み上げることとともに、主張の範囲を正確に狭める作業でもある。

独立検証の後にも、承認と発行が残る

VCSでは、承認済みの検証機関がモニタリング結果を確認し、事業者は検証承認を申請する。Verraによる審査と承認の後には、別途、発行申請が続く。検証報告書を受け取ることと、登録簿の口座にクレジットの発行を受けることは区別される。Verra VCSプロジェクト開発手続

この区別は、契約とスケジュール管理に直接影響する。データ分析サービスを納入した日、外部検証が終わった日、プログラム運営者の承認日を一つの完了日にまとめると、責任が不明確になる。段階ごとの成果物と外部主体の審査時間を分けて考えるほうが現実的である。

農家がプラットフォームにデータをアップロードしたからといって、クレジットの発行が保証されるわけではない。プラットフォーム自体の確認表示、独立検証の結果、発行完了は、それぞれ異なる状態である。事業担当者が顧客に進捗を説明する際にも、この用語を分けて用いれば誤解を減らせる。

発行済みの成果も、権利と利用履歴を管理する

ICVCMは、一意の識別、登録簿での追跡、二重計上の防止をクレジット品質の中核要素として示している。追加性も別個の原則である。排出量を正確に測定したという事実だけでは、発行と利用のすべての条件を満たすことにはならない。ICVCMコア・カーボン原則

事業参加者は取引前に、誰が発行を申請し、どのような権利を持つのかを確認する必要がある。購入者へ移転する対象、農家へ配分する対価、データの利用範囲も区別しなければならない。カーボンクレジットの権利と原資料の所有・利用権を一つのものとして扱うと、不必要な紛争が生じるおそれがある。

発行後も、販売価格と実際の現金収入は契約に左右される。発行量だけで農家の純収益を説明せず、測定・分析・検証・登録などの関連費用と収益配分の条件をあわせて検討すべきである。収益時点を確定しにくい場合は、見込みと確定した契約内容を分けて示すのが適切である。

削減成果を市場につなぐ準備は、一つの目標制度を選び、現在確保している資料をその要件と比べることから始められる。事業者は不明な項目を要確認として残し、次の審査段階に必要な証拠を補う。正確なデータと段階別の役割分担があってこそ、削減活動の価値を市場で説明する基盤も整う。

参考資料