飼料会社が契約農家の低メタン飼料を支援すればInsetting、別の地域のカーボンクレジットを購入すればOffsetting、と一般に説明されます。方向性は正しいものの、それだけでは十分ではありません。同じ削減活動でも、誰がどのようなバリューチェーン境界を設定したか、どの温室効果ガスインベントリに反映するか、別個のクレジットが発行・移転されたかによって、会計処理と主張の意味が変わります。

本質的な違いは、農場の内と外ではなく、報告企業のバリューチェーンの内と外です。ある農家のメタン削減は、その農家にとっては直接排出の削減であり、その畜産物を購入する食品企業にとってはScope 3のサプライチェーン削減になり得ます。一方、購入関係のない企業がそのプロジェクトのクレジットを取得すれば、バリューチェーン外の気候貢献またはオフセットの性格を持ち得ます。場所が同じでも企業ごとに境界は異なります。

Insettingはサプライチェーン活動であり、自動的に認められる会計項目ではない

Insettingとは一般に、企業のバリューチェーン内で排出を削減したり、除去を増やしたりする介入を指す実務用語です。畜産では、低メタン飼料の支援、ふん尿管理の改善、エネルギー効率、再生可能エネルギー、生産性・健康の改善、サプライチェーンデータの構築などが候補になり得ます。しかし、インセッティングと名付けただけで企業のScope 3が自動的に減るわけではありません。

GHG ProtocolのScope 3の枠組みにおいて、企業はバリューチェーン全体の排出影響を評価し、削減活動の優先順位を決めます。実際の介入をインベントリに表すには、購入量、供給元、活動データ、排出係数、算定方法がその変化を捉えなければなりません。企業が業界平均の排出係数を使い続ければ、特定農家で実際に改善が生じても報告値には現れないことがあります。そのため、サプライチェーン別の1次データ、追跡可能な調達量、一貫したベースラインが重要です。

また、一つのバリューチェーン内でも複数の企業が同じ成果を自社の削減として説明する可能性があります。農家、飼料会社、加工業者、流通業者、ブランドがそれぞれ貢献していても、どのような主張ができるかは契約、会計境界、プログラム規則によって決まります。貢献を共同で説明することと、同じ1トンを複数の主体が排他的な削減またはクレジットとして計上することは異なります。

Offsettingは別の場所の成果を買うだけで終わるものではない

Offsettingとは通常、組織のバリューチェーン外で生じた削減・除去成果をカーボンクレジットなどの単位で取得し、定めた排出に対応させるアプローチです。プロジェクトは、追加性、ベースライン、モニタリング、検証、リーケージ、永続性、登録、重複防止などの規則を満たす必要があります。実際の排出削減とクレジットの発行・移転・償却は、それぞれ異なる事象です。

SBTiは、バリューチェーン外の削減をBVCM、すなわちBeyond Value Chain Mitigationと説明し、企業は自社の事業活動とバリューチェーンの削減を優先すべきであり、BVCMはその削減に代わるものではないと明記しています。これは、クレジットを購入したのでサプライチェーンの削減は不要だという解釈を防ぐ重要な原則です。ISO Net Zero Guidelinesも、バリューチェーン排出の大幅な削減、残余排出、除去・相殺、透明性のある主張を区別する共通言語を提供しています。

Offsettingは質の高いプロジェクトに資金を供給できますが、購入企業の畜産サプライチェーン自体が変わったことを意味しません。外部の森林プロジェクトのクレジットを購入しても、飼料調達のメタン原単位が下がるわけではありません。サプライチェーンインベントリとクレジットの使用履歴を分けて示し、ステークホルダーが実際の事業削減と外部貢献を区別できるようにする必要があります。

現場シナリオ:一つの低メタン飼料をめぐる三つの主張

食品企業Bが契約農家Aに低メタン飼料の費用と測定費を支援し、その農場の畜産物を購入すると仮定します。第一の経路はバリューチェーン削減です。Aの腸内発酵排出の減少が同じ境界と方法で算定され、Bが実際に調達した量と結び付けられ、BのScope 3算定方法がその変化を反映するなら、Bはサプライチェーン削減の成果を説明できます。

第二の経路はプロジェクトクレジットです。活動が認定された方法論に基づいて登録・検証され、クレジットが発行された場合、誰がそのクレジットの権利を持つかを契約で定める必要があります。Bがクレジットを第3者に販売しながら、同じ量を排他的な自社削減成果として同時に使えば、プログラム規則と主張の境界によっては二重計上または誤解のリスクが生じます。

第三の経路は飼料会社の製品主張です。飼料会社が技術提供に貢献した事実は説明できますが、農家Aの削減量全体を自社製品だけの成果に帰属させるには、比較設計、実際の摂取量、換気・飼養の変化、測定不確かさ、契約上の権利を確認する必要があります。一つの活動に複数の参加者がいても、因果的な貢献、インベントリ削減、クレジット所有権、マーケティング権は、それぞれ別の問いです。

最初に会計境界を描くべき理由

Insettingを設計する際、最初の文書はプロジェクト紹介書ではなく、サプライチェーンマップであるべきです。農家から加工、流通、ブランドまでの物理的な製品フローと契約フローを描き、報告企業の組織・事業境界とScope 3カテゴリーを示します。対象家畜と飼料、生産期間、調達量を結び付けられるかも確認します。証明書だけがあり、実際の購入量と結び付いていなければ、インベントリ反映の根拠は弱くなります。

ベースラインは、何も対策を取らなかった場合の排出を表す必要があります。低メタン飼料の導入前後だけを比較すると、季節、飼養頭数、生産量、換気の影響が混ざる可能性があります。農場別の直接測定、排出係数、または混合手法のどれを使ったか、生産物単位と絶対量のどちらを比較するかを明示します。排出原単位が下がっても、生産量の増加によって総排出量が増えることがあるため、両方の指標を見るのが望ましいでしょう。

GHG Protocolは2026年にLand Sector and Removals Standardを公表しており、2027年1月1日に発効する予定です。この基準は、農業の土地活動と除去を企業インベントリで扱うための基準を示しますが、プロジェクトクレジットの認証や検証基準そのものではないとFAQで区別しています。畜産メタンへの介入でも、企業インベントリ会計とプロジェクトクレジット会計を一つの文書で混同しないことが重要です。

権利と費用は炭素量より先に合意する

サプライチェーンプロジェクトには、少なくとも四つの権利があります。原データへのアクセス権、成果をインベントリに反映する権利、マーケティングで成果を説明する権利、そしてクレジットが発行された場合に保有・販売する権利です。農家が機器を所有しているからといって四つの権利をすべて持つわけでも、費用を負担した企業が自動的にすべてを持つわけでもありません。契約で具体化する必要があります。

費用も分けて考えます。飼料の追加費用、センサーと校正、データ通信、現場記録、方法論開発、検証、登録、販売の各費用を誰が負担するか決めます。削減量の市場価値だけを提示し、農家の運用負担とデータ提供範囲を除外すれば、プロジェクトの継続は困難です。成果未達、センサー障害、飼養中止、調達契約終了、クレジット未発行の場合のリスク分担も必要です。

主張の文言は証拠の水準に合わせる必要があります。低メタン飼料の給与活動を支援した、契約サプライチェーンで検証された排出削減をインベントリに反映した、別途認証されたクレジットを償却したというのは、それぞれ異なる主張です。測定中の実証事業をすでに達成した相殺のように表現したり、インベントリの推計値を取引可能なクレジットのように呼んだりしてはいけません。

実行チェックリスト

  • 報告企業のバリューチェーン境界と実際の製品・契約の流れを最初に描きます。

  • 活動がScope 1、Scope 3介入、バリューチェーン外の貢献のどれに属するかを区別します。

  • ベースライン、対象家畜、期間、生産物、調達量、算定方法を固定します。

  • サプライチェーンの1次データが企業インベントリの算定に実際に反映されるか確認します。

  • インベントリ削減量とプロジェクトクレジットの発行量を別の台帳で管理します。

  • 農家、飼料会社、加工業者、ブランドのデータ権と主張権を契約で定めます。

  • クレジットの保有・移転・償却と、二重計上を防ぐ手続きを定めます。

  • 総排出量と生産物単位の排出原単位を合わせて報告します。

  • 飼料、測定、検証、登録、運用の費用を誰が負担するか明示します。

  • 実際の証拠水準に合わせ、活動・削減・貢献・相殺の表現を区別します。

結論

畜産サプライチェーンにおけるInsettingとOffsettingの違いは、プロジェクトが農場内にあるか別の地域にあるかだけでは決まりません。Insettingは、報告企業のバリューチェーン内で実際の生産・調達方法を変え、その変化をインベントリに結び付けるアプローチです。Offsettingは、バリューチェーン外の別個の削減・除去成果を、定められた単位と規則に従って調達し使用するアプローチです。

両者は競合するというより、それぞれ異なる役割を持ち得ます。ただし、バリューチェーン削減を優先し、外部貢献がそれに代わってはならないという原則、そして一つの成果をインベントリ・クレジット・マーケティングでどう主張するかを分ける規律が必要です。畜産プロジェクトの出発点は、インセッティングという名称ではなく、サプライチェーン境界、1次データ、権利、二重計上防止の契約です。この四つが明確になって初めて、低メタン活動は宣伝文句を超え、信頼できるサプライチェーン転換になります。

出典